短い期間で濃い体験ができた平湯温泉でのリゾートバイト
現在33歳。
大学4年の夏休みに岐阜の平湯温泉の旅館で、1ヶ月ほど住み込みでリゾートバイトをさせてもらったことがあります。
大学入学当時から、一つの飲食店でアルバイトをしていましたが、4年生になり、もっと別の経験もしておけばよかった、と後悔し始めたのがきっかけです。
学生のうちにいろいろ経験したい

そこで考えたのが、リゾートバイトでした。
とはいえ、人見知りな性格。
大勢のリゾートバイトが応募するような、大規模なホテルよりも、こじんまりとした旅館はないものか、と探してみたところ、リゾートバイト専門の求人サイトでピッタリの旅館を見つけました。
バイト先には夏休みの間だけ休暇をもらうことにし、旅館に向かいました。
初めての仲居の仕事
仲居の仕事は、お客様を客室に案内し、お茶を入れてお風呂や食事の説明をすることから始まります。
初めは先輩についてもらえますが、慣れれば一人で対応しなければなりませんでした。
その時に困ったのは、周辺の観光地情報を知らないことでした。
お茶を入れている間にお客様から観光地や最近の天気を聞かれることが多いのです。
考えてみれば、旅館に泊まる人は観光で訪れている場合がほとんどなので、当然といえば当然。
でも、自分が働く(動く)ことしか考えていなかったので、そこまで気が回っていませんでした。
仕事においては、お客様が求めるものは何かを考えることが必要なのだと、気付くことができました。
客室の案内が終わると、早めのまかないがありました。
家族経営の比較的小さな旅館でのリゾートバイトだったので、旅館のご主人や女将さんと揃っていただきました。
でもお客様の夕食の準備があるので、ゆっくりはできません。
かき込むように食べて、仕事に戻りました。
配膳して料理を運び、お皿を下げて、洗って、食器棚へしまう、を繰り返し、頃合いを見て、客室に布団を敷きます。
二人一組で敷くのですが、始めたころは上手く広がらなかったシーツが、だんだんとピシッとうまく決まるようになりました。
バイト同士、息が合ってきたのだと、嬉しくなったのを覚えています。
おいしい夜食の時間もあり、それが一日の中で一番リラックスできる時間でした。
印象に残っているのは、近くの居酒屋へ女将さんたちが連れて行ってくれた時のこと。
仲は良いけれど、けっしてなぁなぁの関係ではない、ということを証明するかのように、女将さんに悪態をついたバイトの子がこっぴどく叱られました。
どんなに親しくなっても、立場はわきまえなければならないのです。
厳しさと優しさで育てられた

朝はお客様の朝食準備をするので、とても早起き。
それまでのバイトは夜遅くなることが多かったので、慣れるまでは辛かったです。寝坊して、電話で起こされたこともありました。
朝食の後は掃除の時間でした。「見えるところだけキレイにするのが掃除じゃないよ」。
今でも覚えている女将さんの言葉です。
仕事の量は多く、お客様の見えないところでは、いつも走っていました。
終わりの日を指折り数えたこともありました。
でも、リゾートバイトを終えてみると、これから社会に出て行く上で、大切なことをたくさん学ばせてもらったと思います。
現在33歳、翻訳者。
まったく違う仕事をしていますが、お客様に見えないところで走り、見えないところまで心を配るという仕事への向き合い方は、リゾートバイトで教わり、身につけたのだと思っています。